映画の果実



ジョージ・クルーニー主演の、サスペンスなハードボイルド映画。

中年の暗殺者ジャック(ジョージ・クルーニー)の、裏社会で生きてきた男の孤独と、
研ぎ澄まされた神経と、葛藤、かすかにみえた愛の物語。

ジャックは、雪山で一緒にいた女と過ごしている。
ジョージ得意の、まったりしたベッドシーンだ。

散歩に出かけた2人は、何者かに狙撃される。
間一髪、ジャックは狙撃手を撃ち、今までベッドを共にしていた女も撃ち放つ。

組織と連絡を取ったジャックは、身を潜めるよう指令され、
イタリアの小さな村に、アメリカ人フォトグラファーとして、部屋を借り、
ひっそりと、しかし、暗殺者、そして命を狙われるものとして、居座ることに。

途中、ライフル制作の使命を授かり、黙々と制作に打ち込む中、
隣人の、ジャックの心を見透かすかのように、近寄ってくる神父や、
娼婦のクララ、同じ組織の女マチルダと出会い、彼の中で少しずつ
今までとは違った、感情が芽生え始めるのだが・・・・・・。

監督は、U2やニル・ヴァーナーのPVを手がけた人ということもあり、
オープニングの、トンネルを失踪するジャックの車から、抜け出るあたりに差しかかる光
(このシーンの美しさと、物語が進行するにつれジャックの気持ちを表しているのか、
とても、素敵だ)。

また、ピクニックと称し、ジャックの秘密の場所とされる森林の美しさなど、
カメラはとてもいい感じ。

そして、登場する女性陣が、ヨーロッパ風で、みんな美人。
品があり、ナチュラルで、個人的にはマチルダが好きだったので、
もっと登場させてほしかった
やっぱり私は、アメリカ人よりも、ヨーロッパ女性の方が好み。



映画の果実


ただ、物語の序盤から、この暗殺者の気持ちの変化が
手に取るように分かってしまう。
しかしながら、不思議なのが、分かっていても、緊張感はずっと保たれ、
目が離せず、息を呑むように見入ってしまう演出は、なかなか見事だ。


でも、声を大にして言いたいのが、ジョージがミスキャストである。
スナイパーとしてのジョージ。
無口で、鍛えられた肉体、鋭い眼光。
かっこいいのだが、ジョージとしてかっこいいのであり、
どうも、内面からにじみ出る、スナイパーとしての痺れるかっこ良さが足りない。

ジョージファンの私でも、ちょっと違うなぁ。と思う。

こういうのは、ダニエル・グレイグや、やっぱりジャン・レノが似合う。
クララがジャックに惹かれるのも、だって、ジョージだもん。と見えてしまう。


そして、もう1つ声を大にして言いたいのが、
本作の原題は、「ザ・アメリカン」 邦題が「ラスト・ターゲット」
邦題だと、物語の展開そのまんまだし、この“アメリカン”というのは、
異国の地で、やたらとどこの国?と聞かれ、何度も発するセリフ。
そして、「これだから、アメリカンは。」とも何度も浴びせられる。
ここにこそ、孤独な殺し屋である背景を感じるところであり、
やはり、この邦題はNGではないだろうか。



大人の男性が、ブランデーを飲みながら観てほしい映画である。