映画の果実



観終わった後、好き嫌いがハッキリ分かれる作品だと思った。
そういうのは、この手の作品に多い。

セリフが少なく、独創的で、説明されない作品だ。

現在、賞レースで勝ちまくっている、
「アーティスト」もその類いなのではと、私は予感している。

そして、私はというと、ダメだった。
結構理解に苦しみながらも、違和感を覚えながらも
気になる。というのが、わたしの特徴なのだが、
本作に限っては、イライラした。

ロックンロールやTVの普及により、時代は、創造力や空想などよりも、
刺激的で、より現実的な激しさの流れに。

かつては、人気を博したマジックも、いまやすっかりお呼びでない感じに。
初老の手品師(=イリュージョニスト)は、
いわゆる“どさ周り”をしながら、わずかな収入で生活している。

そんな時、スコットランドの離島で、アリスという少女に
ふと、手品をしたところ、彼女は彼を魔法使いと思い込み、
勝手についてきて、共に暮らし始める。

アリスに生き別れた娘を重ねる手品師は、やってきた鮮やかな都会に魅せられる
彼女を、落胆させまいと、彼女にさまざまなプレゼントを贈るのだが、
アリスは、魔法で出てきたと思い、大喜び。
だが、もちろん、夜間のバイトなどをしながら、手品師がお金を稼いでいる。

やがて、アリスは少女から1人の女性へとなるのだが・・・・・。



映画の果実


なんだ、アリスは!!!
言葉が通じない2人(フランス人とイギリス人)という設定であるにはあるが、
あまりにも、アリスの描写が不足しすぎている。

なぜ、彼女は手品師についてきたのか?
プレゼントをもらえるから? 島を出たかったから? 手品師に何かを重ねたのか?

服をねだったりするのも、まったく理解できない。

魔法使いだから、いいの?
大人になっていくのに、何も感じないのか?

無邪気さなんて、みじんも感じなく、ただただ、アリスの身勝手さばかり
鼻につく。

ただ、ジャック・タチが娘に残した脚本だけあって、
彼を取り巻く、ほろ苦さなどは絶品。

また、アリス以外(手品師や同じような境遇)のリアルさは、
ぐさりとくる。

そして、絵(というか、絵の演出みたいな)は、動きも細かく、
ジブリが配給にも絡んでいるせいか、ジブリっぽい感じさえする。


どうせなら、アニメよりも実写で観たかった。
そうすれば、アリスにも何らかしらのスパイスがされたのでは?